藤城滉俊「線路沿いのアクティビティ -パレットのような環境を追求する-」
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鉄道が人の流れをつくる。
人の流れが新たな環境を生み出す。
日常に非日常のスケールが交わることで生まれる、新たなアクティビティの場を提案する。
Phase1.実験 家の中に1/50の人を座らせる
緊急事態宣言により気軽に外出ができない中で、自宅を敷地としたスケール実験を行った。
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1/50の人間を100人用意し、家のどこかに座らせる。
100人それぞれが、集まって座り何をしているかを想像しながら、人間を配置する。
1-1.パレットと絵具の関係への着目
使われていないパレットに人を座らせると、決められた型によって座らせ方が規定されるが、使い古されたパレットでは、絵具の跡がパレットの型とは別の領域的な広がりを見せることを発見した。
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1-2.パレットと絵具の関係を平面ダイアグラムとして扱う
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△ダイアグラム
大きいパレットを、平面的なダイアグラムとして見てみる。
パレットに色が加わっていくことで、元の型とは別の領域が広がり、環境や集まり方が多用に変化していく。
1-3.図面化して考える
小さいパレットを、1/50スケールに置き換え図面化した。
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△平面図・断面図
立体的な人の集まりが、絵具が付加することよって現れる。
以上のスケール実験から、パレットのような環境について追求していく。
Phase2.1000人のスケールへの発展 パレット/絵具=まち/劇場外演劇
パレットのような環境を1000人のスケールへと発展させていく過程で、寺山修司の市街劇(=「劇場」ではなく「都市」を舞台とした演劇)を始めとした「劇場外演劇」に関心を持った。
2-1.劇場外演劇を平面図化
1000人スケールへの発展のために、2008年に横浜市の吉田町で行われた劇場外演劇を、写真や動画などの資料から平面図化し「1000人の集まり方」の考察を行った。
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△とある演劇の平面図
7つの演劇が同時多発的に始まる。
2-2.人の流れとパレット
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△人の集まりに色をつけた平面パレット図
日常に非日常のレイヤーが重なることで、人の流れが変化する。
劇場外演劇の場合、人の流れが舞台と観客の関係を自然発生させる。
Phase3.アウトプット 非日常のスケール=鉄道
パレットのような環境とは、日常のスケールの中に非日常のスケールが挿入され、人の流れをつくりだすことで生まれる。
設計へのアウトプットとして非日常のスケールを設計の中に取り組むことが必要となった。
ここからバンコクにあるメークロン市場が想起された。
非日常のスケールの存在があることで、人の流れが起こり、環境が変化する。
この例をもとに、私は非日常のスケールを「鉄道」としてアウトプットを行った。
3-1.選定敷地:江ノ島電鉄 腰越⇔鎌倉高校前駅間
https://gyazo.com/fff8b12bf896504b703ceff6b179ca85△計画敷地(©2020 Googleを加工して作成)
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敷地には、路面電車の名残から線路を横断しなくては入れない住宅が存在する。
また、鉄道が住宅の間を縫うように走り、日常のスケールと非日常のスケールが非常に近い距離で混在している場所である。
3-2.提案:線路に開くことで発生する、コミュニティのプラットフォーム
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△配置図兼屋根伏図
全体構成
①向かい合う建築とセットにして設計を行う。
②鉄道が通る時と通らない時……昼と夜とで人の流れ、リアクションが変化する環境をつくる。
3-3. 詳細設計部分 レベル差がある敷地で人の流れをつくる
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詳細設計部分は線路を挟んで2.5~3.5mのレベル差がある。
この高低差を活かしつつ、人が横断するモチベーションをつくる。
3-4.ダイアグラム
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①向かい側のアクティビティ(=ファサード)を見るために、天井高と屋根に変化をつける。
②横断するモチベーションを生み出すために、大階段を設計。崖地を緩やかに繋ぐ。
3-5.平面計画
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天井高さの違いなどから、出来上がった環境に適したプログラムを入れる。
このエリアを芸術村エリアとして、創作の場となるスタジオと宿泊所に、鑑賞する場となるギャラリーとレストランを入れた。
3-6.「1000脚の椅子」への回答
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△詳細設計部分のシーンパース・断面図
鉄道の往来は領域に制限を付ける。
深夜に鉄道が通らなくなると、その領域は拡大する。
時間によって、人の視線、座る向きが変化し、昼と夜とで異なるアクティビティが生まれる。
この環境をつくりだすことによって、人と人は出会い、交わり、パレットのような環境をつくりだすのではないだろうか。
講評:1000人が座る風景を、座り方・座るという行為への批評的姿勢から考える課題。人間はどのような状況・環境に座りたくなるのかを改めて検証するため、身の回りのモノに1/50の人間を座らせて考察することから設計をスタートした。藤城くんの提案は、パレットの淵というフォーマルな場所だけでなく、絵具がつくるささやかな立体、色の痕跡など、インフォーマルな場所に座る魅力を見出し、その風景の具現化を自然にイメージできる具体的な敷地を設定した、その視点にまず好感を持った。加えて、境界を横断し、人々が自発的に領域を発見しながら混ざり合う様を設計しようと、果敢に挑戦した熱意も評価に値する。(中川)